ACアダプタの特性は掲載されている仕様だけでは不十分な場合があります。このページではそういった情報をまとめたいと思い開設しました。
今のところ、簡単な比較しかありませんが、今後、必要に応じて増やしてゆきたいと思います。
なお、掲載している情報はボクが購入した「1台」の測定結果です。製品ばらつきは考慮されていません。また素人測定につき測定精度も不確かです。また汎用のテスターなどを使用しての測定です。(校正された測定器での測定ではない)ので、情報の取り扱いにご注意ください。
下図は測定したスイッチングACアダプタの写真です。2014年01月現在、秋月電子通商にて販売されている商品です。電圧は5.0Vのものを電流は1A前後のものを選びました。
まずはACアダプタの基礎知識として選び方から説明します。ACアダプタを選ぶ際に、一般的に注意しないといけない項目は以下の通りです。
ACアダプタを選ぶときの確認事項
定格出力電圧[V]は供給先の入力電圧範囲[V]に合わせる
供給先で使用する電圧に適しているかどうかを確認します。例えばArduino UNOのDCジャックの入力電圧は7V〜12Vです。Arduino UNOは5V動作だから5VのACアダプタを繋いでしまったという間違いをしないように注意します。(通常、Arduino UNOには9V出力のACアダプタを使用します。)
出力がAC(交流)かDC(直流)か
多くの場合はDC(直流)出力のACアダプタを使用します。ACアダプタだからAC(交流)と勘違いしないように注意します。「ACアダプタ」とは「AC 100V」のコンセントから回路に電源(主に「DC(直流)」)を供給するためのアダプタという意味です。
電圧が安定化されているかどうか
トランス式のACアダプタは例えば5V出力であっても電流が少ない時は10V以上になるタイプがあるので注意が必要です。秋月で売られているスイッチングACアダプタは定格電圧に安定化されています。
定格出力電流[A]は回路に必ず流れる電流値では無い
電圧が安定化されたACアダプタは、当然、出力電圧が一定に保たれます。しかし供給先の消費電力は様々です。例えば、5V 0.2Aの回路に5V 1.0Aの安定化ACアダプタを接続すると回路に流れる電流は(1.0Aでは無く)0.2Aとなります。ACアダプタの定格電流は定格電圧を維持したまま流せるスペック上の最大電流値です。一方、安定化されていないトランス式の5V 1.0AのACアダプタの場合、1.0Aの電流が流れている時に5Vの電圧になり、その他の電圧値や電流値は仕様外で、どんな値になるか分かりません。このため、ACアダプタが使える家電製品の注意書きには「必ず専用のACアダプタを使用するように」と書かれています。守らないと危険なのです。
定格出力電流[A]には多少の余裕が必要
例えば、通常、5V 0.1Aの回路に電源を供給する場合、5V 0.1AのACアダプタを使用しても供給能力が不足する場合があります。多くの電子回路において消費電流が動作中に変化しますのでACアダプタはその変化の瞬時最大値まで供給できる必要があります。また、供給先の回路にヒューズやポリスイッチが入っている場合、そのヒューズを切る(または電流を十分に低減する)ことが出来る供給能力が必要です。回路がショートしてもヒューズが切れずに電流が流れ続けるようではヒューズの意味がありません。
PSEマークが必要
国内の電気安全法に適合したACアダプタにはPSEマークが表示されています。このマークの無いACアダプタを家庭のコンセントに接続してはいけません。守らずに泣くことになったり、泣くことすら出来ない事故に遭遇してしまう恐れがあるからです。必ずPSEマークの表示を確認してから購入してください。
ここではそれぞれのACアダプタについて公開されている仕様の比較を行います。なお、仕様はメーカーの都合やロット違いなどで変更される場合があります。
型番
AD-D50P100
| GF06-US0512A
| GP05-US0510
| 発売日
| 2013/04/16
| 2010/04/13
| 2002/11/21
| 写真
|
|
|
| 方式
| スイッチング方式
| スイッチング方式
| スイッチング方式
| 定格入力電圧
| AC 100V〜240 V
| AC 100V〜240 V
| AC 100V〜240 V
| 定格入力電力
| 8.3 W
| 7.5 W
| 7.7 W
| 定格出力電圧
| DC 5 V
| DC 5 V
| DC 5 V
| 定格出力電流
| 1.0 A
| 1.2 A
| 1.0 A
| 出力特性
| 安定化
| 安定化
| 安定化
| リップル出力
| 記載なし
| 240 mV
| 200 mV
| 損失
| 入力 0.3 W
| 出力 250 mA
| 出力 250 mA
| |
ここではそれぞれのACアダプタの消費電力の比較を行います。ボクはXBeeで使用することを考えているので、気になるのは無負荷時の消費電力です。AC側の消費電力は電圧と電流の両方を測定することができる電力テスターを使用しました。一般的なテスターでAC電流だけを測定するとスイッチング動作の影響で正しい消費電力が図れないためです。
DC側に所定の出力電流が得られるように負荷抵抗を調整し、その時のAC側の消費電力を測定しました。したがって、消費電力にはACアダプタ内部の消費電力と負荷抵抗による消費電力の両方が含まれます。
測定結果を下表に示します。赤文字の部分は他よりも「悪い」(消費電力が多い)部分です。この結果からは少なくともGP05はXBeeのような間欠動作には向かないことが分かりました。
型番
AD-D50P100
| GF06-US0512A
| GP05-US0510
| 写真
|
|
|
| 出力 0mA 時
| 0.0 W
| 0.0 W
| 0.3 W
| 出力 50mA 時
| 0.4 W
| 0.5 W
| 0.6 W
| 出力 100mA 時
| 0.8 W
| 0.8 W
| 0.9 W
| 出力 200mA 時
| 1.6 W
| 1.5 W
| 1.6 W
| 出力 500mA 時
| 3.3 W
| 3.1 W
| 3.2 W
| 出力1000mA 時
| 8.3 W
| 6.9 W
| 6.9 W
| |
また、この表から1000mA時(5W出力)のおよその効率も分かります。例えば、AD-D50P100であれば、5Wを得るのに8.3Wを消費しているので約60%、GF06-US0512AとGP05-US0510は約72%となります。実際には後述のように出力電圧も変化するのでGF06-US0512Aの場合、約70%程度に、GP05-US0510が約69%まで下がります。
ここではそれぞれのACアダプタの電圧降下の比較を行います。一般的に消費電流が増大すると供給電圧が低下しますが、あまり電圧降下が大きい(または電圧上昇が大きい)と回路の動作が不安定になる場合があります。測定結果からAD-Dシリーズでは消費電流が増えると電圧が上昇する傾向があることが分かりました。
型番
AD-D50P100
| GF06-US0512A
| GP05-US0510
| 写真
|
|
|
| 出力 50mA 時
| -0 mV
| -0 mV
| -20 mV
| 出力 100mA 時
| -0 mV
| -30 mV
| -30 mV
| 出力 200mA 時
| +20 mV
| -40 mV
| -50 mV
| 出力 500mA 時
| +60 mV
| -70 mV
| -100 mV
| 出力1000mA 時
| +110 mV
| -190 mV
| -260 mV
| |
XBeeの消費電流は、1mAを大きく下回っている状態と100mA以上の大きく消費する状態とがあり、動作時に大幅に変動します。また、LEDやリレーなどの回路についても通電時と非通電時とで消費電流が変化します。こういった回路に電源を供給する場合は上記の測定結果のように消費電流を変化した時のACアダプタの特性が重要になります。
さて、これら3種類のACアダプタからXBee用を選ぼうとしたとき、ボクはGF06シリーズが良いと思います。XBeeの低消費電流時に0.3Wの電力を消費し続けるGP05は電力の無駄使いです。また、XBeeと他の回路とが同時に動作して消費電流が増大した時に電圧が上昇する仕組みは、ケーブルや内部回路などの損失を補正する動きになる点は良いのですが、その応答でアナログ回路が発振する懸念が(電圧降下よりも)高まります。さらに出力1000mA時の効率を考えてもGF06シリーズが最も高効率です。
どの結果も普段は問題にならない些細なことですが、3つのACアダプタを比較して選ぶとしたらGF06シリーズが良いでしょう。既に手持ちで別のACアダプタがあるなら、わざわざ買い換えるほどの効果はありません。例えば0.3Wの電気の無駄使いは年間で60円に相当しますので、ACアダプタを600円で買い換えた場合、10年たたないと元が取れません。