このページでは、立体映像の3D表示方式と3D映像フォーマットについて説明します。3D映像は、3Dに対応したBlu-rayソフトや、一部の衛星放送を3D対応のテレビで視聴することが出来ます。 ただし、両眼の間隔が5cm以下のお子様(一例として6才以下)の3Dテレビや3D対応ゲーム機での3Dによる視聴は控えてください。(2D表示の視聴は問題ありません) |
下図は3Dに見える原理を説明した図です。左右の目には間隔があります。このためTV画面上で左目で見る映像が右側に、右目で見る映像が左側にズレると画面から飛び出して見えます。また、左目で見る映像が左側に、右目で見る映像が右側にズレると奥まった映像に見えます。 3Dに見える原理の説明図 3D映像を撮影するときは、2台のカメラを左右に並べて撮影します。ただし、その間隔や被写体への角度、レンズの焦点距離などを正しく調整しなければ、見えづらくなったり疲れやすい映像になったりします。 また、通常は左右の目の間隔5〜7cmで調整されています。したがって、目の間隔が5cm以下の子供(目安は6才以下)にとっては、製作者の意図を大きく超える立体映像に感じられるため、視聴を控えるようにしてください。 3D映像の視聴方法や撮影方法、表示方法については、2003年にSHARP、SANYO、SONYなどが設立した3Dコンソーシアムによってガイドラインが示されています。一般向けの資料も公開されているので下記を参照ください。 参考サイト:3DC(http://www.3dc.gr.jp)
シャープのAQUOS専用3Dメガネ(AN-3DG10、AN-3DG20)には3D映像を2D映像で視聴可能な「3D→2D変換機能」が搭載されています。3D視聴中に目の疲れた人や、6才以下のお子様などが2Dでの視聴を楽しみつつ、他の人は3D映像を視聴しつづけることが出来ます。家族で視聴する場合には便利な機能ですので、AQUOSをお持ちの方は活用してみると良いでしょう。 |
3D映像には複数のフォーマットがあります。3D Blu-rayソフトで主に使用されているのはフレームパッキング(Frame Packing)方式で、フルHD(1080p)映像などの高画質な映像を収録することが出来ます。しかし、映像の情報量が2倍に増加するので、現在の衛星デジタル放送では放送することが出来ません。また、3D対応のBDプレーヤなどが必要になるのも情報量が増加しているからです。 衛星デジタル放送で用いられているのはサイドバイサイドハーフ(Side-by-side Half)方式です。情報量は従来と同じですが、左右の映像データの横方向を半分に縮小し、左右に並べて表示しますので、水平解像度が半分になります。このため、通常の3Dに対応していないBDレコーダでも録画や再生が可能です。もちろん、3D映像を表示するには3D対応テレビと3Dめがねが必要です。
|
以下のような3D映像を表示する方式があります。専用メガネが必要な方式と不要な方式があります。通常のメガネをかけている方は、通常のメガネの上から専用メガネをかけることが出来ます。
|
フレームシーケンシャル方式とは左右のフレームを交互に表示して専用メガネで視聴する方式です。専用メガネは液晶シャッター方式となっており、テレビが左目用のフレームを表示中は右目を液晶シャッターで伏せ、右目用フレーム中は左目を伏せます。 液晶シャッターの信号は、一般的に、赤外線を使った無線方式が用いられています。テレビに装備された赤外線の発光部から専用メガネの受光部に左右のフレームの切り替え信号を送信します。無線以外にも有線方式がありますが、視聴時にケーブルが邪魔になるので、大型テレビには不向きです。また、将来的には電波による無線方式も登場するかもしれません。 通常の2Dテレビは1秒に60コマ(インターレース方式のフィールド)で表示しています。左目用と右目用にそれぞれ1秒に60コマの表示を行うには、1秒120コマで切り替えを行うことで滑らかな表示が出来ます。 このときプラズマや液晶の表示パネルが映像の切り替え速度が間に合わないと、左目用の映像が右目でも見えてしまうクロストークが発生してしまいます。このクロストークの問題を改善するために、3D表示用に蛍光体の応答速度を調整したプラズマパネル(パナソニック)や、次世代液晶UV2Aと4原色方式を組み合わせた高速で高輝度な液晶パネル(シャープ)が開発されています。 フレームシーケンシャル方式の3Dテレビは、1986年に日本ビクターがVHD方式プレーヤで対応していました。VHDはカートリッジ入りの映像用の磁気ディスクで、日本ビクターをはじめ国内の多くの企業が賛同していましたが、パイオニアのLD(レーザディスク)との規格争いに敗れてあまり普及しなかった方式です。以降、LDやDVDが普及しましたが、VHDの敗退を引きずっていたせいなのか、3D映像ディスクの規格化は低迷していました。 3Dの再浮上は、テレビのハイビジョン化により映画館の高付加価値化が必要になり、3D映画の上映が増加してきたことがきっかけです。さらに、Blu-rayディスクとHDMIによる高度な著作権保護により映画館と同レベルの映画を安全に販売できる技術的な仕組みが整ってきたことも要因の一つです。すでにBlu-rayディスクとHDMIのそれぞれの規格から3D対応規格が策定されています。 デジタルテレビとしての3Dテレビは、韓国のサムスンが2010年2月に発売しました。サムスンは3Dテレビで先行している印象を与えて、ブランド力の強化と維持を図り、ビジネスとしての成功を図ろうとしています。しかし、肝心の技術力や品質はビジネスを軌道に乗せた利益でまかなう傾向があり、3Dテレビにおいても完成度の低い商品でした。 一方、国内メーカはプラズマパネルや液晶パネルの技術面でサムスンよりも先行している強みがあります。そこで、第1弾目の商品からクロストークの課題を解決した商品を発売し、技術力で優位に立とうとしています。ビジネスで強いサムスンと、技術で強い日本メーカの構図が出来上がっていましたので、今後も同じ傾向が続きそうです。 |
視差バリア方式の長所は、専用メガネなしで視聴できる点です。欠点は液晶の正面で視聴しないと3D表示に見えにくいことです。個人用のディスプレイには使用できますが、リビングなどで家族で視聴するテレビには不向きです。 視差バリア方式は表示用の液晶の各画素を左右のどちらかの方向からしか見えないように垂直格子を設けた3D表示方式です。液晶の画素の手前側に垂直格子を並べて、格子と格子の隙間から画素が見えるように設計されています。格子(バリア)の幅を太くして複数の画素を隠すことで多方向化にも対応可能ですが、方向が増える分だけ解像度と輝度が低下します。 視差バリア方式は常に3D表示となり、視差バリアのある状態で2D表示すると解像度や輝度が半分になってしまいます。この欠点を補うには視差バリアの格子を液晶で構成するスイッチ液晶を用います。 スイッチ液晶付き視差バリア方式の3D液晶パネルは通常表示用の液晶と視差バリア用のスイッチ液晶との2種類の液晶を重ねて製造します。そして、スイッチ液晶に垂直格子の視差バリアを表示したり消したりして、2D表示と3D表示を切り替えます。視差バリアを消すことで通常の2D表示の液晶と同等の解像度や輝度を保つことも出来ます。このようなスイッチ液晶つき視差バリア方式は2002年にNTTドコモから発売されたSH251is(シャープ製)で用いられてから一般的になり、以降も3D表示に対応したパソコンなどで使われています。 |
レンチキュラーレンズ方式とは、印刷物や液晶などの各画素を左右どちらかの方向からしか見えないように、カマボコ型垂直レンズを格子状に配列した方式です。印刷物にレンズシートを貼り付けた立体画像のシートは古くから使用されています。こちらも専用メガネは不要です。 一方向から3D表示するには2画素一組で表示します。より多くの画素を用いることで、複数の方向から見たときの3D映像に対応することも可能です。しかし、多方向化とともに解像度や輝度が低下する原理的な欠点があります。 さらに、視差バリアのように2Dと3Dを容易に切り替えることが出来ないことも欠点の一つです。したがって、3D専用のディスプレイが主用途であり、2D表示の必要なテレビ用には不向きです。また、3D表示の解像度が低下する欠点もあります。 参考文献:日本特殊光学樹脂 |
左右の映像を垂直偏光と水平偏光に分けて投影し、偏光板つき専用メガネを通して視聴する方式です。しかし、水平と垂直偏光な直線偏光の場合、視聴者の頭やメガネの角度によってクロストークが発生してしまいます。これを改善するために左旋偏光と右旋偏光を使った円偏光タイプも用いられています。 偏光方式の液晶テレビでは各画素毎に格子状に偏光方式の異なる偏光板を並べます。メガネを使用していない時の2D表示で解像度や輝度を保つことが可能です。ただし、3D表示の解像度が低下する欠点があります。 偏光板の特性 |
3D映像の記録されたBlu-rayディスクの多くはAACSによる著作権保護がかけられることになります。Blu-rayディスクに記録された3D映像はHDMI端子(3Dに対応したHDMI 1.4 3D)を使ってテレビに表示することが出来ます。 しかし、3Dに対応していないHDMI入力つきテレビやD端子入力では3D映像を見ることが出来ません。例えば、HDMIやD端子に流す映像をフレームシーケンシャルで送信し、Blu-rayプレーヤから専用メガネにフレーム切り替え信号を送信することで、従来の(3D非対応の)テレビに3D映像を映すことも考えられますが、現在のBlu-rayでは、そのような方式は用いられていません。また、D端子については、著作権保護の観点から、Blu-rayの3D映像をD端子に出力できるようにはならないと思います。 つまり、テレビとBlu-rayを3D対応のものに買い換えないと3D映像を再生するとこが出来ないのです。一見、不合理であるように感じられるかもしれませんが、むしろ、HDMIやBlu-rayによって著作権が保護できるからこそ、3DのBlu-rayを登場させることが出来たと考えるべきでしょゆ。仮に古い機器で3D映像が楽しめることを優先していたとすると、今度はソフトが登場しなかったでしょう。事実、前述のとおり3Dの技術は古くからありました。それが、ようやく家庭に届くようになった最大の要因は強固な著作権保護が可能になったことです。 |
シャープのAQUOS専用3Dメガネのシャッターを切り替えるための赤外線信号送信のソフトウェア(Arduino用)を作成しました。このソフトウェアでは3Dメガネの左右のシャッターを120Hzの周期で切り替えるための信号を生成することが出来ます。 まず、Arduinoのハードウェアを準備します。お持ちでない方は「秋月電子 Arduino互換ボードの使い方 」を参照して製作してください。 次に、下表からスケッチをダウンロードします。スケッチの始めの方に記述しているdefine LED_IR_PORTに続く数字が赤外線LEDを接続するポートです。初期値はポート12、論理はHIGHで点灯です。Arduinoのポート12から適当な抵抗と赤外線LEDを直列でGNDに接続すれば完成です。 立体信号が出ているかどうかを確認するには、左目用LED、右目用LED、プッシュスイッチを接続します。LEDは1〜2cm程度を隔てて左右に並べます。部屋を暗くして3Dメガネをかけて2つのLEDを見ると、本来のLEDの位置よりも奥まって見えます。また、プッシュスイッチを押すとLEDが飛び出して見えます。なお、LEDの残像やLEDの明るさでArduino基板が見えると3D感が出なくなります。例えばA4のコピー用紙などでArduinoやLEDを覆うと、3Dに見えやすくなります。
上記ソフトウェアに関していかなる損害も補償しません。 左目表示時測定結果の波形例 ミニブレッドボードを使用した配線例 |
シャープのAQUOS用3Dメガネの赤外線信号には少し特殊なPPM変調が用いられています。信号0のシンボル長は40us(25kHz)で赤外線リモコンの副搬送波26us(38kHz)との干渉を防止するように設定されているように思われます。信号の先頭にはPPMで「0011」の4ビット分のプリアンブルが240usの期間に送られ、その後に左目表示か右目表示かを区別するための特殊な信号が320usの期間に送られます。この左右の区別信号は位相変調(PSK)になっていて、左目と右目の信号で直交しています。 3Dメガネ用赤外線信号波形 これらの左目表示用信号と右目表示用信号は8.4ms(120Hz)の周期で次々に送信されます。左目を表示する場合は右目のシャッターを閉じて左目でしか画面を見ていない状態を作り出しています。 下図は上記ソフトウェアを使用してシャープのAQUOS専用3DメガネAN-3DG10のタイミングチャートを解析した結果です。本結果は左右の切り換え信号とLED点灯のタイミングを調整して、クロストークを低減できる条件を独自に解析したものです。実際の仕様に基づいたチャートではありません。本サイトの情報で何らかの問題が生じても、当方は何ら責任を負いませんので、ご容赦ください。 3Dメガネ用タイミングチャート(クリックで拡大図) |
方式編 - インターレース方式 概略 プログレッシブ方式 IP変換 方式編 - 液晶のスペック 解像度 アスペクト比 輝度 応答 方式編 - 液晶方式 TN,IPS,VA,ASV,CPA,MVA,PVA,OCB 方式編 - Blu-rayディスク Blu-ray (BD-RE,BD-R,BD-ROM) 資料編 - レコーダー製品情報 地上デジタルチューナ内蔵製品 |