ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ設計編

自作アンテナ

作成:2003年10月
更新:2008年10月
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自作アンテナについて


 昨今は(放送開始当時と比較して)地上デジタル用の市販アンテナが普及し、放送出力も上がってきました。アンテナは買ったほうが簡単で安全です。
 とはいえ自作アンテナで受信することに楽しみがあるので、夏休みの宿題として、作ってみるのも良いでしょう。

 第一ステップは、最も容易なダイポールアンテナの自作です。このページでは、プラスチック製ハンガーを利用した室内用アンテナの作り方を説明します。

━━━━━━━━━━┐┌━━━━━━━━━━
          ││←中心線
       網線→┠┴┨
          ┃同┃
          ┃軸┃
          ┃ ┃      ダイポールアンテナ

 第二ステップとしては、やはり、八木アンテナでしょう。このページでは、八木アンテナの設計方法についても、説明します。

                        _
                       //    導波素子
              ━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                     //
                    //
                   //      給電素子
        ━━━━━━━━━━┐┌━━━━━━━━━━
                 /││←中心線
                //┠┴┨
               // ┃同┃
              //  ┃軸┃
             //   ┃ ┃  反射素子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           //     ┃ ┃
            ̄      ┃ ┃       八木アンテナ

ダイポールアンテナの製作

 ダイポールアンテナは手軽に製作できるアンテナです。電波の強い地区での室内アンテナや、ワンセグ受信用や、ワンセグの微弱再送信用アンテナ等に適しています。

ダイポールアンテナ
自作ダイポールアンテナの製作例

 下図はアンテナ部の配線図です。2本の銅線で構成されたアンテナ素子を、同軸線の網線と中心線に接続します。上図はアンテナ素子をプラスチック製のハンガーに取り付けた製作例です。

                ┃同┃
                ┃軸┃
                ┃線┃
             網線→┠┬┨
      アンテナ素子    ││←中心線
      ━━━━━━━━━━┘└━━━━━━━━━━

      |←───────── 28cm ───────→|

 以下の配線部分の拡大写真も参考に製作してみてください。

配線部分
配線部分の拡大写真

 この自作アンテナにブースターを搭載してみました。自作ブースターの製作例は「設計編-自作ブースター」を参照ください。

ブースター内蔵の室内アンテナ
自作アンテナ+自作ブースター

 「設計編-アンテナ測定」にもダイポールアンテナに関する説明があります。

CQ出版の広帯域アンテナ[新着]

 CQ出版社から「すぐに使える地デジ受信アンテナ」というアンテナ基板つき書籍が発売されました。書籍と言っても文字の書かれたページは38ページしか無く、付録のアンテナ基板がメインです。
 特長は帯域が広い独自のパターンをシミュレーションで設計されていることです。読み応えはありませんがポイントが押さえられているのでアンテナを実践的に学ぶにはちょうど良いでしょう。

CQ出版
CQ出版の広帯域アンテナ



アンテナとプリアンプをセットでどうぞ


八木アンテナの概略


  八木アンテナの構造は下図のようになっており、図の上方向からの電波を受
  信することが出来ます。

      放送局の送信所方向
     ↑

  ━━━┿━━━  導波素子(第3素子).....位相が進む
     │                  |
     │                  |
     │                  ↓
 ━━━━│━━━━  給電素子(第2素子)...同位相で合成される
     -│+                  ↑
     │                  |
     │                  |
━━━━━┿━━━━━  反射素子(第1素子)....位相が遅れる



アンテナの設計

 はじめに検討しなければならないのは必要なアンテナ利得と周波数等です。予め、受信地点における必要な利得と中心周波数を求めておく必要があります。
 中心周波数とは、アンテナ利得が最も高くなる周波数です。利得は、全て周波数で一定ではありませんので、最も受信したい周波数、もしくは、最も遠い放送局を中心に選択します。
 また、受信したい放送局の方向が、1方向でない場合は、指向性も考えなければいけません。アンテナ利得は、回線設計から算出できますが、放送局が見通しで無い場合は、ダイポールか2素子アンテナで実際に受信して、CNRを測定したほうが、早いかもしれません。
 これらが決まれば、八木アンテナの設計ツールを使って、実際のアンテナのパラメータを調整してゆきます。例えば、下記のツールを使用します

  八木アンテナのシミュレータ
  YSIM
  数理設計研究所

 下図および表はYSIMを使った3素子の八木アンテナの計算の結果例です。

YSIMの計算結果例


3素子の八木アンテナ計算結果
素子名 番号 素子の全長[mm] 間隔[mm]
導波素子 第3素子 281.8 mm
89.9 mm
給電素子 第2素子 293.8 mm
119.9 mm
反射素子 第1素子 299.8 mm
給電インピーダンス 10.66 + 26.56i

八木アンテナの整合回路設計

 アンテナのインピーダンスは、同軸ケーブルのインピーダンスである75+0iΩに近づけなければいけません。アンテナと同軸ケーブルのインピーダンスがあっていないと、受信した電波が同軸ケーブルに入らないからです。
 インピーダンスが75+0iに、どれだけ近いかを「VSWR(電圧定在波比)」という指標で表し、一般には、VSWRが3以下であればアンテナとして動作します。より良い受信のためには2以下が目標です。
 VSWRは、上記のシミュレータYSIMでは「SWR」と表示されています。上記の例では、SWR=7.9と非常に大きくなっています。各アンテナ素子の長さや間隔といったパラメーターを変更して、VSWRが下がるように設計する方法や、給電素子でインピーダンスを75Ωに変換する方法もありますが、そのような設計は容易ではありません。そこで、ここでは、八木アンテナと同軸ケーブルの間に整合回路を挿入する方法について紹介します。

 八木アンテナの整合回路は、シミュレータYSIMで計算されたインピーダンスを元にコイルやコンデンサを使って75+0iΩに変換します。
 下図のアンテナの場合、表中のZin(ANT)のZの行に、上記の3素子八木アンテナのインピーダンス11+27iが入力されています。同表の次の行では、10pFのコンデンサをShunt(並列)に接続し、インピーダンスを76+6iに変換しています。
 これらにより、VSWRが整合回路の無い場合のVSWR=7.9からVSWR=1.1に改善されました。


 以上を元に給電素子(第2素子)に整合回路を追加して同軸ケーブルを接続した例が下図です。C1の10pFだけでも動作しますが、下例ではチューナーに静電気が混入することを防止するためにC2とL3を挿入しています。L3は性能の劣化を伴うことがあるので、必要に応じて入れてください。

                 ┏━┓10pF    給電素子(第2素子)
   ━━━━━━━━━━━━━┬┨C1┠┬━━━━━━━━━━━━━
                |┗━┛|
                |  ┏┷┓
                |  ┃C2┃
                |  ┗┯┛47pF
                |┏━┓|
                ├┨L3┠┤
                |┗━┛|0.22uH (アキシャルリード型)
                │┌──┘100nH (チップ型)
                ┠┴┨
                ┃同┃       C3、L3は静電気防止用
                ┃軸┃
                ┃ ┃

 整合回路をアンテナに含めた変則的形状の給電素子を使ったアンテナも多いと思います。このようなアンテナは、給電素子でインピーダンス変換を行っています。例えば、電磁界シミュレータを使用して設計しているのだと思います。フリーソフトでは、SONNET Liteがあります。
 ユーザ登録によって2〜3素子程度の八木アンテナが設計できますが、複雑な構造になると無料版では難しいです。また、アンテナ利得の計算も有料版のみの対応なので、整合を合わせるところまでしか設計できません。

  SONNET Lite(電磁界シミュレータ)
  有限会社ソネット技研

落雷や落下などに御注意

 自作アンテナを屋外に設置する場合は落雷に注意が必要です。アース接地や、落雷保護用の回路を挿入、落雷前にアンテナケーブルをアンテナや機器から取り外したりする等の対策を推奨します。
 住居が鉄筋コンクリート造の場合や、窓の手すりやベランダへの設置などは、比較的、安全ですが、特に、屋上や屋根の上等の住居よりも高所に設置する場合は、同軸ケーブルを十分にアース接地された金属管の中を通す等の対策も必要です。火災等の大きな事故に繋がる場合がありますので、十分に注意してください。加えて、高所作業を伴う場合は、作業時のご自身の落下や、風雨などによる設備の落下などの事故にも備える必要があります。

いかなる事故や損害が発生しても、当方は、一切の責任を負いません。


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